◇加賀の女

金沢時代の話しです。
私の生まれは能登。
高校生を金沢で過ごした私にとって金沢はとても思いで深く、そして懐かしい町です。

兼六元町のたばこ屋の二階に下宿していた私は、この季節になると朝一番に兼六園の雪を踏むのがとても新鮮で好きでした。

今は周りに柵が張られ有料となっていますが、当時は市民の庭だったんです。金沢の良いところは沢山ありますが、天神橋から見る浅野川上流は格別です。今はもう見られなくなった友禅流しは、私の目にしつかりと焼きついています。

一度機会があったら是非訪れてみて下さい。
きっと疲れた気持ちが癒される、そんな町です。
前置きはこの位にして、そんな金沢に赴任したのは、入社から五年程たった夏の頃でした。

女性の社会進出が叫ばれたこのあたりから女性の相談が年々増加。
この金沢も例外ではありませんでした。
当時の女性の薄げ相談は男性と違いほんの僅かでした。
相談にみえられる女性のほとんどは、病気による脱毛（円形脱毛症、抗癌剤や薬による脱毛、ヤケド、等）でした。

しかしこの頃からお客様の相談にに変化が表れました。
それは男性と同じく薄毛相談の増加です。
確かに女性でも男性型脱毛症に悩む人はいましたが、時代の流れなのか、宣伝の効果なのか、いずれにしても地下に潜伏していた潜在層が動き始めた頃でした。

訪問先は、車で四十分程行った、加賀市とゆうところです。
奥さん本人からの相談で、ご主人には内緒にしたいとの事でした。
道が入り組んだ古い城下町、やっとのことでたどり着き挨拶を済ませるも、何かビクついている様子です。
どうもご主人の事が気になるらしいのです。

二階に通され小声で会話、なんとも隠微な空気が漂っています。
これでは落ち着いて話すこともできず車の中で話す事に。
ご主人は余程嫉妬深いらしく、用心に用心を重ね段取りよく家を出、狭い町内誰かに見られないように車の中では縮こまりながら郊外の田圃の中へと車を移動したのです。

何か「夜逃げ」か「かけおち」をしているような変な気持ちです。

相談内容は薄毛が気になるとの事ですが、どこも薄くもなくむしろ多い位です。ただ私も営業で来た以上何か販売をしなければなりません。
とにかく型を取って、見積もりを出す事にしました。
（型を取るには、型の素材を温める為の電源が必要です。どのように対処したかの説明は長くなるので省きます。）

型取りは車内では狭すぎる為、外に出て頭の形をとる事に。
広い田園で奥様さんは中腰になり、私は型を上から押さえる様子は、どう見ても変です。それこそこんな所をご主人に見られでもしたら大変な事、ビクビクしながらの作業でした。

しかしそんな危険まで犯しそこまでしても欲しい髪とは、「一体何なんだろう」と考えてしまいます.。

近年、女性「かつら」の売上が男性「かつら」の売上を超えてしまいました。もっとも女性はパーマや毛染めなどで男性より髪を酷使しています。
そう考えると男性のように薄くなっても不思議ではないのですが、決定的な違いはホルモンの違いがあります。

元々男性より女性の方が「かつら」に対する抵抗は少なく、これまでもおしゃれ用として流行った時代があります。

女性の需要は（1）白髪隠し（2）ボリュームアップ（3）薬剤性脱毛症（4）オシャレ用（5）壮年性脱毛症
などで四十代の後半からホルモンのバランスが不安定になる更年期あたりから増えてきます。

こうした年齢層がいまのかつら業界を支えているといっても過言ではありません。いつまでも綺麗で若くありたいとゆう「永遠のテーマ」が続く限り、この市場は増え続けて行くのでしょうか？

日頃からの手入れを忘れず生活習慣に気をつけ、大切な髪を守りたいものです。ちなみに加賀市のこの奥さんは、ご主人に内緒で３８万の契約と相成りました。

「写真提供：金沢市」

◇ストレスは風船

髪をすすいでいる時、抜け毛が長い行列をつくり、排水溝にのまれていく様子を私は見てしまいました。原因は仕事のストレスでした。

タバコは若い頃から吸っていましたが、徐々に本数も増えお酒が入ると一日70本程吸うようになっていました。またお酒が入ると「つまみ」が食事がわりで、帰宅も1時、2時の深夜、いつのまにか体重も15キロ程落ちていました。

こうした不規則な生活に対して、体の一部が「警告」しはじめたのでした。それは当然の結果だったとしてもさすがにショックでした。

ストレスは風船のようなものです。
緊張しきった体はやがて爆発、いたるところに深い傷を残します。

こうしていったん生活が乱れると、強い磁気で引かれるように深みにはまってしまいます。このような状況は誰もが経験しうるものですが、ないに越したことはいうまでもありません。その為にも日頃から心身ともにリラックスできる方法をしっかり身につけておきたいものです。

このコーナーで取り上げた生活習慣ですが、栄養においては偏りがなくバランスのとれた食事を心がけ、量ではなく品目（食材）を多く摂るようにしましょう。そして三度の食事をしっかり摂る事が大切です。

また脱毛はいくつかの要因が重なり進行する場合が多く、問題は早めに改善してより良い育毛環境をつくりましょう。

◇ストレス

ストレスの要因は様々ですが、ストレスがお酒の量を増やし、タバコの本数を増やし、睡眠不足までも招いているといっても過言ではありません。

本来、緊張を解放するお酒だったりするわけですが、逆に深みにはまってしまったりします。

強いストレスは「タバコ」や「睡眠不足」と同様「血行不良」を起こし、髪の成長に必要な栄養素が送られなくなったり、ホルモンのバランスが乱れ心身ともに蝕まれる事にもなりかねません。

体が何かを拒絶している時は、あせらず、気持ちを静め、ゆとりのある判断をしたいものです。

◇タバコとアルコール

一人で飲む酒、付き合いで飲む酒、そのスタイルも量もまちまちです。
少量のお酒は薬にもなりストレス解消にもなりますが、お酒も度を越すと生活のリズムが乱れてしまいます。
肝臓の負担を避け自分に合った適量にとどめましょう。

タバコの害は今更いうまでもありません。
「百害あって一利なし」その通りだと思います。

睡眠でも触れましたが、血液は全身の細胞に栄養と酸素を送り届けています。タバコのニコチンや一酸化炭素はこの血管を収縮させ血液の流れを悪くさせます。これではいくら良い食事をしても問題があります。

本気で育毛を考えるならタバコは止めるに越したことはありません。

しかし体に悪いとわかっていても中々止められないのが現実です。

◇髪の栄養素

髪はアミノ酸が結合してできたケラチンという硫黄を含んだタンパク質でできています。（皮膚の角質、爪も同様）

このため含硫アミノ酸（硫黄を含む）を多く含んだタンパク質を摂る事が大切です。

動物性タンパク質

• 肉、魚（いわし、サバ、アジ、サンマ、白身魚）卵・乳製品


• 脂肪の多い肉よりも鳥のささみなど脂肪の少ない肉が良い。

植物性タンパク質

• （大豆、豆腐、納豆、豆乳）玄米、とうもろこし


• 大豆は「畑の肉」とまでいわれる良質なタンパク質が豊富で栄養のバランスにもすぐれています。

ビタミンＢ群

• 私達の体は、タンパク質を摂るだけでは髪に栄養をを与える事はできません。食事で摂ったタンパク質をエネルギーに変えるにはビタミンＢ群が必要になります。
  この成分は健康な髪の育成を促す働きがあり、中でもビタミンＢ2、ビタミンＢ6は重要な役割を担っています。

ビタミンＢ2

• 脂質や糖質の代謝を促進させ、細胞の再生や成長を促進する働きや、粘膜を保護する働きがあります。


• （レバー、うなぎ、焼き海苔、にんじん、トマト、ピーマン、かぼちゃ、小松菜、ほうれん草、グリーンアスパラ、にら、豆類）

ビタミンＢ6

• タンパク質の代謝に重要なな働きをし、健康な皮膚や髪をつくります。


• （いわし、まぐろ、さば、豆類）

ビタミンＡ

• 肝臓に蓄えられ、皮膚・爪・髪・目の粘膜などを健康に保つ働きがあります。


• レバー、うなぎ、バター、ブルーベリー、にんじん、トマト、ピーマン、かぼちゃ、小松菜、ほうれん草、グリーンアスパラ、にら

ビタミンＣ

• ストレスの抵抗力を高めます。コラーゲンの生成に不可欠。
  血管や皮膚を強くし血中コレステロールを下げ、生活習慣病などの要因である増え過ぎた活性酸素を抑える作用があります。


• かんきつ類、いちご、キウイ、レモン、ピーマン、パセリ、キャベツ、ほうれん草、小松菜、長いも、さつまいも、じゃがいも、緑茶

ビタミンＥ

• 毛細血管の血行を良くし皮膚全体に酸素と栄養を供給します。
  過酸化脂質を分解し生活習慣病の予防につながり、ビタミンＣを同時に摂る事で抗酸化作用をより高めます。


• 植物油、ナッツ類、ごま、アスパラガス、かぼちゃ、しゅんぎく、にら、ほうれんそう、さつまいも、ブルーベリー

ミネラル

• ミネラルは細胞が正常に機能する為に必要です。
  中でも亜鉛は皮膚の形成に深く関わり細胞の新陳代謝に重要な役割をはたします。


• 牡蠣、うなぎ、海藻類、かぼちゃ、舞茸、そら豆、ほうれん草、ゴマ、ごぼう

◇食事

スポーツ選手の栄養管理が大変だという話を聞いたことはありませんか。プロ選手だと専門スタッフが栄養をサポートし、食事メニューを提供しているそうです。

確かに太ったマラソン選手はみかけません。
フィギュアスケートで太りぎみの選手もみかけません。（引退後は別人のような人もいますが）（笑）

それは自己管理とこうした食事の管理が、選手の最高なコンディションと健康な体をつくっているからです。

私達の体は髪の毛一本までも食事による栄養によってつくられていることを忘れてはいけません。

健康の基本は食事から、体に良い食事を摂る事（栄養を考えた食事）は髪を育てる最高の環境をつくる事でもあるのです。

◇睡眠

睡眠は疲れた心と体を癒し体力を回復させてくれます。
それは睡眠時には成長ホルモンが分泌され、細胞の新陳代謝を促し、皮膚や筋肉、骨などを成長させたり、傷ついた筋肉や内臓などを修復する働きがあるからです。

しかし睡眠不足が重なるとこうした体の機能を低下させるだけでなく、ストレスなど過剰な緊張を生みだし体への様々な障害となったりします。
なかでも血行障害は髪にとっても大きな問題です。
毛細血管は萎縮し、髪への栄養不足を招き確実に抜け毛が増えてしまいます。

• 生活習慣を整える上で睡眠はとても大切です。


• 自分に合った質の高い睡眠環境をつくりましょう。


• 適度な運動はストレスの解消にもなり快適な睡眠につながります。

◇髪と生活習慣

糖尿病と診断されてちょうど３ヶ月がたちました。始めは中々慣れなった生活も徐々になれ、病状安定の目安であるヘモグロビンA1c値が6.5%まで改善してきました。このヘモグロビンA1cとは、過去１～２ヶ月間の平均的な血糖コントロールがわかる血液検査です。特に食生活の乱れは生活習慣病の要因として度々話題になりますが、栄養が偏ったり不規則な生活やストレスなどもこうした検査で表れてくるようです。

さて生活習慣と髪との関係ですが、頭の中では「髪に良くない」「体に良くない」とわかっていても中々変えられないのが生活習慣です。
まして仕事が絡むととても難しくはがゆい問題です。

日常生活はこうした習慣の繰り返しですが、悪い習慣は長く続けれても良い習慣は長続きしません。
何故でしょうか？

それは痛みとして中々表面化しないからではないでしょうか。

酒やタバコ、そして夜更かし、一日が長ければストレスもたまります。
トラブルの予防、そして脱毛の進行を少しでも遅らせる為にも悪い生活習慣は意識をして改善していきたいものです。

◇ヘアケアによる脱毛

清潔癖は悪い事ではありませんが、行き過ぎたヘアケアは良くありません。特にシャンプーのし過ぎは逆効果です。

過剰な皮脂は良くありませんが、皮脂本来の役割である「適度な潤い」は頭皮を守る為には必要なものです。

また自分の頭皮の特長（乾性・脂性・普通）を把握する事はとても大切です。誤った使い方をすると頭皮を傷つけるだけでなく、痒みや炎症、フケや脱毛など「トラブル」の原因になります。

パーマ・カラーリング・ブリーチは髪を傷めます。頻繁に繰り返していると髪にコシやハリがなくなり薄毛の原因となります。
この場合は逆にしっかりとヘアケアをする必要があります。

脱毛予防

• 自分の頭皮、髪質の特長を良く理解する。
• 頭皮の特長は顔と同じ。
• 自分に合ったシャンプーを選ぶ。
• 正しいヘアケアを身につけよう。

◇壮年性脱毛症

女性の脱毛と男性の脱毛とは明らかに違います。

男性は生え際からトップにかけて脱毛し産毛状態になりますが、女性は髪質が変わっても産毛になるような事はありません。

女性に多くみられる症状は、頭髪全体に脱毛したりまだらに脱毛したりします。このような脱毛症状をびまん性脱毛症ともいいますが、男性のように激しく抜けるような事はなく、全体的といっても髪は全部下に向いており薄く見えるのはトップの一部です。

こうした症状は妊娠、出産で変化が訪れたりしますが、男性のような若年性脱毛症（若ハゲ）の症状はみられず、更年期をを向かえた頃から「髪質が変わった」「髪が柔らかくなった」「髪が細くなった」「頭皮が透ける」と感じる女性が多いようです。

こうした症状を「女性における男性型脱毛症」といったり、「壮年性脱毛症」「びまん性脱毛症」「女性型脱毛症」等といったりもしますが同じ症状を指しています。

髪は男女を問わず歳を重ねるごとに少しずつ変化します。
これは自然な事で、顔にシワが増えるのと同じ様に髪にもこしがなくなり自然と細くなってきます。
原因

• 老化現象


• 女性ホルモンの減少


• パーマや毛染め


• 遺伝

症状

• 髪にコシがなくなる（細くなる）


• トップにボリュームがなくなり透けてみえる


• 全体的に髪の本数が減少する

脱毛予防

• 睡眠を十分とる


• 頭皮・頭髪は常に清潔にする


• 頭皮のマッサージなどで血液の循環を良くする


• 毛染め、パーマなどで頭皮や髪を傷めない


• バランスのとれた食事を摂る


• ストレスを溜めない